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「GAP理事長 折々コラム」を掲載しました

2023年3月8日

GAP理事長 目黒依子の折々コラム 第1回


NPO Gender Action Platform(GAP)より「国際女性デー」を記念してご挨拶申し上げます。日本でもジェンダー平等を目指すグローバルな活動に参加する機運が広がってきています。GAPは国内のジェンダー平等推進のさらなる加速に貢献すべく、2021年4月に発足した「ジェンダー・フォーラム」を主宰し、各界で活躍されている専門家・実務者の方々に主体的に参加いただきながら、知見と情報を共有するナレッジ・ネットワークの活動に力を入れております。ジェンダー平等の国際基準を日本社会の当り前にすることを目指して2011年に発足した頃は、国連の議論では当り前の「ジェンダー平等・女性のエンパワーメント」や「ジェンダー主流化」は日本の政治・経済の分野ではほとんど「言語不明・意味不明」状態でした。それが初めて変化の兆しを見せたのは、グローバル・ビジネスにおけるジェンダー平等の基準の合意が日本でも喫緊の課題となってきた2010年代の半ば以降で、グローバル社会の成長に不可欠の戦略ツールとして「価値」の変革を求める持続可能な開発目標(SDGs)を軸とするグローバル圧力による社会環境の変化への気付きやリスク回避願望によるものと思えます。

 

GAPの最初のプロジェクトは民間団体による東日本大震災の女性被災者支援活動の成果に対する評価でした。報告書やGAPによる現地調査の結果の1つは、平時の行動や意識が被災者の行動や救援活動のパターンに反映されていたという発見でした。その後、このような傾向についてメディアでも取り上げるようになり、特に個人単位でなく世帯主単位の公的支援の在り方が女性個人への支援を阻むことにつながることでした。1993年の「世界人権会議」において「女性の権利は人権である」という表現が導入されて久しいですが、平時の慣習が緊急支援時にも変わらないといえます。また、1994年の「国際人口・開発会議」では「性と生殖に関する健康・権利」について「産む・産まないは女性の権利」が宣言及び行動計画に明記され、会議でも「女性は単なる数字ではない」という発言が、それまでの人口会議の中心課題であった人口爆発や人口減少と出生率など数字の議論に変革を迫っています。現在進行中の出生率低下に関わる政策議論は、1970年代半ばに始まる下降を止めなかった結果です。これも従来の家族観・職業観などジェンダー観の問題です。最近のコロナ禍の影響が女性に対して厳しいという調査結果からも、同傾向が災害や出生率に見られます。

 

2015年から各国政府の実施義務となったSDGsにより、日本社会全体がこれまでの価値観の見直しを迫られています。日本が今年議長国のG7や2019年に議長国となったG20 首脳宣言でも、持続可能な経済成長はジェンダー平等・女性のエンパワーメントは必須だと明示しており、ジェンダーという表現は世界で共有されています。ダイバーシティ、テクノロジー、イノベーション、トランスフォーメーション等々カタカナ満載の昨今、ジェンダー平等・女性のエンパワーメントやジェンダー主流化を言語も意味も明瞭にしましょう。

 

昨秋、想像もしない出来事がありました。高校2年の私がニューヨークの新聞社主催のユース・フォーラムに参加し、テレビのパネル討論に出ているYouTubeを見つけたという連絡でした。1956年、32か国の代表が話し合ったフォーラムのテーマは「私たちの望む世界」。民主主義や人種・民族に基づく偏見などがサブ・テーマで、知識は未熟でもみんな毅然と発言していました。女性解放運動の夜明け前の頃です。改めて動画を見て、今の日本の一人ひとりが「私たちの望む世界」を考えてみると未来を少し明るくできそうです。 

 

目黒

2023/3/8



 

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